ご支援くださる皆様より、裁判に関するメッセージを頂戴致しました。





本庶 佑
京都大学 特別教授

「国民の皆様へのメッセージ」
村中璃子氏に対するHPVワクチン名誉毀損裁判が奇妙な形で確定したということをお聞きして、私の感想を述べさせていただきます。
現在の新型コロナウイルス感染への対応についてからも明らかなように、科学的な正しい情報を尊重して対応しないと、とんでもない社会的な混乱を引き起こします。専門家の勧告に謙虚に耳を傾け、一般の人は身を守り、街を守り、国を守る必要があります。政治家はリーダーシップを発揮して専門家の助言を社会へ実装していく義務があります。残念ながら、HPVワクチンに副作用が強いという一部の風評報道に基づいた村中璃子氏の裁判の結審は、科学的な根拠を元に正しい判断がされたとは思えない、大変残念な結論となりました。この間、我が国では子宮頸部がんの患者さんが確実に増加して、多くの若い女性の命が失われております。日本社会に科学的な情報をいかに正しく伝えるかというマスコミの使命、また一般の人の科学に対する敬意が今後も問われる機会が多々出てくると思います。我が国に科学的知識に基づいた行動が正しく評価されるようになることを切望しております。

横倉 義武
日本医師会 会長

「メッセージ」
今般の裁判の判決によって、HPVワクチンの安全性、有効性が否定されたものではないと受け止めており、我々医療者がなすべきことは、“守れる命は守る”という使命を果たすことであることに変わりはありません。
新型コロナウイルス感染症の発生によって、政府、医療関係者はもちろんのこと、多くの国民が有効なワクチンの開発を望み、あらためてワクチン接種の意義を認識しているところです。
我々は、引き続き、科学的根拠に基づく正確なメッセージとともに、HPVワクチンの接種を促し、女性の命、未来を守っていきましょう。

木下 勝之
日本産婦人科医会 会長

「上告却下の最高裁判断を受けて」
2020年3月5日に下された最高裁による村中璃子氏のHPVワクチン名誉棄損裁判の上告却下の判断は、村中氏は無論のこと、科学的真実に基づいて物事を判断する医学者や臨床医にとっても納得いくものではありませんでした。 しかし、この最高裁の判断は、村中氏の正確な取材によって得た情報から導き出したウェッジの論文内容を否定したものではないことの意義を理解すべきであると思います。池田氏の実験内容とその結論から導き出した研究発表に対する調査委員会の結論は、村中氏の記事を裏付けるものでした。 医学部の3年目に受けた医学概論の授業は、クロードベルナールの「実験医学序説」(三浦岱栄訳 岩波文庫 1938年 1970年改訳 (原著1865年))を教材とした医学研究の基本的考え方に関する講義でした。すでに50年以上も前のことになりますが、この著書から、私どもは、近代医学の考え方として実験医学の意義を学びました。その基本は「観察された事実が構想(仮説)を生み、この構想のうえに推理し実験し、その結果を観察して仮説を修正する。こういう手続によって現象のおこる条件(原因)を解明することが科学の目的である」さらに「実験的事実も,単に論理的な外観,単純な外観 をもっているだけでは,まだまだこれを承認する のに十分ではない.我々はなおも疑って,この合 理的な外観もあるいは誤っているのではないだろ うかということを反対実験によって吟味しなけれ ばならない.この定則はことに医学において厳重 でなければならない.医学はその学問が複雑であ るために事実がいかに論理的に見えても,すなわち合 理的に見えても,これだけでは決して反対証明ま たは反対実験をしなくともよいということにはな らない」でした。このように、真の科学者の基本的姿勢を学んだものです。 司法における言葉の上では、敗訴しましたが, 村中氏の記述の正当性は変わりません。これからもHPVワクチンに関する科学的事実を基本にして、変わることなく勇気をもって国による勧奨に向けた活動を支援したいと思います。

吉川 裕之
茨城県立中央病院 名誉院長、筑波大学名誉教授
捏造という報道が名誉毀損にあたるかどうかが争われた結果、科学的検討なしで、名誉毀損にあたると結論づけられたことは全く残念である。厚生労働者の成果発表会およびテレビニュースのNEWS23における池田修一氏の発表の研究の質は、これまで捏造とされた研究に比べてもかなりひどいものであった。「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけ脳の海馬といって、記憶の中枢があるところに異常な抗体が沈着して、海馬の機能を障害していそうだ。」「これは明らかに脳に障害が起こっているということです。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者さんの共通した客観的所見がこうじゃないですか、ということを提示できている。」とする池田氏の発言が放送されました。社会からは、HPVワクチンの副反応で記憶障害などの神経障害を起こすことの因果関係を立証するデータと受け取られましたが、発表された研究は、とても研究と呼べるようなレベルではなかった。マウスの実験だとしても、1.自己抗体ができて、2.脳血液関門を通過し、3.脳の神経組織に結合し、4.脳に神経障害を起こすことを証明することが要件だと考えられるが、1,2,4については、実験すらしていない。3については、HPVワクチンを接種したマウスの血清を、HPVワクチンを接種していない別の無垢のマウスの脳の切片に振りかけて沈着があったとする実験で、しかもn=1というものであった(これ自体信州大学調査委員会の追試で再現されていない)。またHLAに関する研究では、多くのHLAとの関連を検証すれば一定の確率で有意差がでてしまうことから、Bonferroni法(多重比較法)などで調整を行い、有意差検定のレベルを厳しくするルールがあるが、それを全く無視して、あたかも日本だけでHPVワクチンの副反応が多いことを説明する根拠として示したのである。つまり、全く有意差のないデータを有意差があると断定したのである。これら2つの研究は池田班の班員の研究だが、公の場で発表・解説したのは班長である池田氏なのである。2013年にHPVワクチンの積極的推奨中止を決めた検討部会では、参考人として副反応に関する研究の必要性を訴えた池田氏の意見が採用されたのであり、極めて影響力の大きな人物なのである。発表された内容が真実であれば画期的データであったはずだが、実際のデータとは全く異なるものであった。池田氏は、根拠となるデータが存在しないにもかかわらず、存在すると言ったのである。

神川 晃
日本小児科医会 会長

「「捏造」に思う」
再現されていない1つの実験結果で、今もほとんどの女の子が子宮頸がんの予防接種を受ける機会を逃している。10年後、20年後に、彼女たちが子宮頸がんに罹患したならば、我々はどのように説明してあげればいいのだろう。裁判は科学を顧みない「捏造」という言葉の解釈のみに終わった。 池田修一氏は信州大学医学部附属病院難病診療センター特任教授に就任され、2019~2021年度の厚生労働省科学研究費 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療体制の整備のための研究」の班長を務める。池田氏は科学的に認められるデータを再度提出して問題を明らかにする責任があると思う。

岡野 久
千葉県保険医協会 会長

「上告受理申立て判決へのメッセージ」
医師でジャーナリストの村中璃子先生の上告受理申立ての判決が「却下」に終わったとの判決結果は、大変残念に思います。当会は不適切な発表により国民に対して誤解を招く事態となったことは真に遺憾であり、「捏造」と批判されて当然と考え、村中先生を支援してきました。2016年8月に起こされた裁判では言われなき誹謗中傷を受ける等、逆風の中にあっても村中先生は常に科学的な根拠に基づき、医学的な立場で真剣に向き合い、毅然と言論活動を推進されてこられた様々なご功労に敬意を表し、感謝申し上げます。 そして、不適切な発表などにより、HPVワクチンの積極的勧奨が中断していることは我が国の大きな損失です。年間一万人が子宮頸がんに罹患し、三千人が亡くなっている悲惨な現状を克服するために、当会は積極的勧奨の再開を求めて運動をしていきます。また、これからも科学的言論活動が守られ、自由に発信できる環境が成熟することを願っています。村中先生、本当にお疲れ様でした。これからも応援しています。

仲村 和子
仲村医院 副院長
常日頃開業小児科医としてmediaの情報発信に不満に思うことがあります。それは今回の子宮頸がん予防ワクチン関連報道のなかで、科学的ではない、偏向とも言えるような、偏りがあり、それにより誤った判断をほとんどの人がしてしまう。ワクチン接種後に辛い状況に至った事例の報道と合わせて、子宮頸がんの実態も報道して、その上で各自が自己決定できるよう、理性的な内容であるべきと思う。 村中さんの勇気に感謝します。

國島 友之
国島医院 院長
理解出来る人だけが行動するのでは意味がなく、日本だけ国際基準と異なる行動を取ることの無意味さを広く知るべきだと思います。

鮎川 浩志
あゆかわこどもクリニック 院長
将来も日本で子宮頸がんが減少しないのであれば、厚生労働省と報道機関だけでなく、私たち医師にも不作為の責任が生じると考えています。村中璃子先生と「守れる命を守る会」の活動を応援しています。

永野 伸一
永野歯科医院 院長
 事実を伝えるには、長いながい時間がかかります。それまでに多くの労力を必要としますが、何時か国民に伝えることができます。
 事実と科学は同義語だと思いますが、しかし事実を無視した科学者もどきの医師が存在することも事実です。
そのような存在に惑わされずに、成果が出るまで脇道に逸れないで行動して下さることを心から期待致します。

石渡 勇
「守れる命を守る会」代表、日本産婦人科医会副 会長

「HPVワクチンをめぐる名誉棄損裁判を振り返って」
2016 年 3 月 16 日、科学的・倫理的に問題の多い厚生労働科学研究班の主任研究者である池田修一信州大学元教授が、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけ、脳に異常な抗体が沈着して、海馬の機能を障害していそうだ」「明らかに脳に障害が起こっている。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている」と説明する映像が TBS「NEWS23」で全国放送された。国民はワクチンが原因、ワクチンが怖いと信じるのは当然である。その直後、子宮頸がんワクチン被害者連絡会は、国と製薬会社を相手に訴訟を起こした。科学的なエビデンスに基づかない研究発表が後押ししているようにも思える。 村中氏は池田氏の研究発表は捏造であると批判し、池田氏から名誉棄損裁判を起こされた。これらの一連の報道は科学界に大きな衝撃を与えた。本来ならば科学の世界で議論されるべきことが、捏造に相当するか否かをめぐる裁判にすり替えられたことである。しかも、信州大学調査委員会も国も「不適切な研究発表で国民に誤解を招いた池田氏の責任は重い」と認めていたにも係わらず、科学的検討なしで、名誉毀損にあたると結論づけられたでのである。司法による「科学」への背信とも言えましょう。 科学の在り方およびその言論が司法裁判で歪曲されたままになったことは大変残念です。 この問題は真に科学界こそが自浄的に解決を図るべきことであります。当会はこれからも、社会全体が科学的根拠に基づいた言論活動の環境が守られ、自由に発信できる環境が成熟していくよう活動を続けてまいります。

村中 璃子
京都大学大学院医学研究科非常勤講師、ベルンハルトノホト熱帯学研究所研究員

「裁判を支えてくださった皆さまへ」
裁判としては残念な結果となりましたが、 科学界が一丸となって応援してくれたこと、 科学は司法による攻撃に屈しないという姿勢を示せたこと、 市民の子宮頸がんワクチンに対する理解が深まったことは大きな成果だと感じています。応援してくださった皆さま方には心からの感謝の意をお伝えするとともに、今後とも科学に根差した言論が日本に広がっていくようささやかながら努力を続けていくつもりです