2019年6月13日


声明:子宮頸がんワクチン、積極的接種勧奨差し控えから6年
―命と科学を損なう2つの裁判―

守れる命を守る会
代表 石渡 勇

明日6月14日で子宮頸がん(HPV)ワクチンの積極的接種勧奨の一時停止から6年なります。積極的接種勧奨(ワクチン接種の通知を送ること)が停止されてはいますが、子宮頸がんワクチンは2013年4月1日に定期接種化されてから今日に至るまで定期接種のワクチンです。にも関わらず、厚労省の直近の報告によれば、子宮頸がんワクチンの定期の予防接種率は0.3%(厚労省「定期接種の予防接種者数」に基づく)となっています。この間、子宮頸がんの罹患率は上昇、20代から40代の子どもを産み育てる年代をピークに、年間3000人弱の女性が尊い命を落としています。
当会は、本年3月8日の国際女性デーに際しても、「子宮頸がん予防HPVワクチン接種の積極的勧奨再開に関する声明」と「子宮頸がんから日本女性の命と健康を守るための科学的な言論活動を支援する声明」の2つの声明を出し、厚労省に対して接種勧奨再開の要請を行いました。
WHO(世界保健機関)からも、安全性と予防効果の高い、子宮頸がんワクチンの積極的接種勧奨を停止しているわが国の政策に対する批判の声明が届いています。WHOはまた、反ワクチン運動を世界保健の脅威と警告し、特に今年は反子宮頸がんワクチン運動対策に取り組むと宣言しています。世界では主流となっている、より予防効果の高い9価ワクチンの接種も勧めています。
日本でも、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会、日本小児科学会、予防接種推進専門協議会などの専門科医会・学会がくりかえし積極的勧奨の再開を求める声明や要望書を出してきましたが、未だ再開の目処がたっていません。
その背景には、積極的接種勧奨を阻み、命と科学を損なう、2つの裁判があります。
1つは、2016年7月27日に提起された子宮頸がんワクチンによるものだという被害に対する国家賠償請求訴訟です。しかし、子宮頸がんワクチンの安全性と効果は、世界中の大規模データから科学的にはっきりと確認されています。一方、ワクチンのものだと言われる症状とワクチン薬剤との因果関係に関する科学的な証明は一切ありません。
もう1つは国賠訴訟からわずか1週間後の8月4日、子宮頸がんワクチンの薬害を主張する池田修一氏から提起された村中璃子医師に対する名誉毀損訴訟です。池田氏は、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに脳に異常な抗体が沈着。海馬の機能を障害していそうだ」「ワクチンを打った後,こういう脳障害を訴えている患者に共通した客観的所見が提示できている」などと発表しましたが、そのような事実はありません。本年3月26日、一審判決は被告の全面敗訴となり、雑誌社と元編集長は判決を受け入れましたが、村中氏は4月8日付で控訴しています。

ここに当会は、以下のとおり宣言します。
・子宮頸がんワクチンの積極的接種再開と9価ワクチンの承認を強く求めます。
・法律を使って科学を捻じ曲げることや、科学的言論を封じることについて強く抗議します。
・日本人女性の命と日本の科学を守るために控訴した村中璃子氏への支援を続けます。


2つの裁判に関するメッセージ(今回の声明に向け寄せられたメッセージ)